利益計算方法
投資信託の取引で得る利益は、安く買って高く売れた時の「譲渡益」と投資信託から払出される「分配金」とがあります。投資信託の分配金は、その投資家が儲かっていようが損していようがすべての保有者に(保有口数に応じて)均一に出され、また、ファンドが値下がりしていても出ることがあります。したがって、受取った分配金をそのまま利益と考えることができません。
そのような特殊性から、投資信託の分配金は2種類に分類されています。実質的にその投資家の利益となる「普通分配金」と、投資資金を払い戻しただけの「元本払戻金(特別分配金)」です。投資信託の利益を計算するには、譲渡損益に普通分配金の受取り額を加算したトータルリターン(総合的な損益)を算出することが重要です。
具体的な計算方法
では、計算例を使って、計算方法を見ていきましょう。
例1)譲渡損益がプラスの例
- Aファンドを基準価額 9,000円(1万口あたり)で100万口買いました。
- 申込み手数料は、申込み金額の3.24%でした。
- Aファンドを基準価額11,000円(1万口あたり)で100万口解約しました。
- 信託財産留保額0.2%がかかりました。
- 保有している間に普通分配金500円が出ました。
譲渡損益の計算
譲渡損益は、「解約代金-購入代金」で計算されます。
・解約代金は…
計算式: ( 基準価額 - 信託財産留保額 )× 口数
計算例: (11,000円-11,000円×0.2%) × 100(万)口 = 1,097,800円
・購入代金は…
計算式: 基準価額×口数 + 申込み手数料
計算例: 9,000円×100(万)口 + (9,000円×100×3.24%)= 929,160円
・譲渡損益
計算式: 解約代金 - 購入代金
計算例: 1,097,800円 - 929,160円 = 168,640円
・手取りベース(税引き後)の譲渡損益
計算式: 譲渡損益 - (譲渡損益×所得税)-(譲渡損益×地方税)
計算例: 168,640円 -(168,640円×15.315%)-(168,640円×5%)= 134,381円
分配金の計算
・受取り分配金額(税引き前)
計算式: 普通分配金 × 保有口数
計算例: 500円 × 100(万)口 = 50,000円
・手取り金額(税引き後)
計算式:受取り分配金額-(受取り分配金額×所得税)-(受取り分配金額×地方税)
計算例: 50,000円 - (50,000円×15.315%)- (50,000円×5%) =39,843円
トータルリターン
税引き前: 譲渡損益168,640円 + 分配金50,000円 = 218,640円
税引き後: 譲渡損益134,381円 + 分配金39,843円 = 174,224円
例2)譲渡損益がマイナスの場合
- Bファンドを基準価額 11,000円(1万口あたり)で100万口買いました。
- 申込み手数料は、申込み金額の3.24%でした。
- Bファンドを基準価額10,000円(1万口あたり)で100万口解約しました。
- 信託財産留保額0.2%がかかりました。
- 保有している間に普通分配金500円を受取りました。
譲渡損益の計算
譲渡損益は、「解約代金-購入代金」で計算されます。
・解約代金は…
計算式: ( 基準価額 - 信託財産留保額 ) × 口数
計算例: ( 10,000円 - 10,000円×0.2%) × 100(万)口 = 998,000円
・購入代金は…
計算式: 基準価額×口数 + 申込み手数料 1200000
計算例: 11,000円×100(万)口 + (11,000円×100×3.24%)= 1,135,640円
・譲渡損益
計算式: 解約代金 - 購入代金
計算例: 998,000円 - 1,135,640円 = ▲137,640円---- 損失
譲渡損益がマイナスの場合、非課税となり、これが手取り額となります。
分配金の計算
・受取り分配金額(税引き前)
計算式: 普通分配金 × 保有口数
計算例: 500円 × 100(万)口 = 50,000円
・手取り金額(税引き後)
計算式:受取り分配金額-(受取り分配金額×所得税)-(受取り分配金額×地方税)
計算例: 50,000円 - (50,000円×15.315%)- (50,000円×5%) =39,843円
トータルリターン
譲渡損益がマイナスとなったので分配金の収入と損益通算をします。
譲渡損益▲137,640円 + 税引き前分配金50,000円 = ▲87,640円の損失
トータルリターンが▲87,640円マイナスとなり、分配金に対して課税徴収された税金が返還されます。
取引報告書、計算書等での確認
投資信託を売却した時には売却代金や税金の金額が書かれた「取引報告書」などが、分配金が出た時には「分配金の計算書」などがそれぞれ販売会社から交付されます。損益通算の結果などは、特定口座の「年間取引報告書」に記載されています。
解約代金の計算のなかの「基準価額-信託財産留保額」は、取引報告書などには「解約価額」と記載されます。信託財産留保額とは、解約する時にファンドにかかるコスト負担を解約者がファンドの財産に残していくもので、保有を続ける投資家と解約する投資家の間の公平を図るための制度です。信託財産留保額は、設定されているファンドとされていないファンドがあります。
また、購入代金については、購入の約定金額(基準価額×口数)に申込み手数料を加えた金額を「個別元本」として記載されています。