公的融資制度一覧 生活福祉資金貸付制度も解説

更新日:2023/03/10

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個人向けの公的融資制度には、“生活福祉資金貸付制度”と“日本政策金融公庫の融資制度”があります。国からお金を借りる公的融資制度を探している人は、自分に向いている融資制度を確認してみてください。

【公的融資制度ごとの向いている人】
公的融資制度 借りられる資金 向いている人
生活福祉資金貸付制度 生活費 ・生活費を借りたい個人
日本政策金融公庫の融資制度 開業資金や事業資金 ・開業資金を借りたい人
・事業資金を借りたい個人事業主

公的融資制度ごとで借りられる資金が異なるため、向いている人も変わります。公的融資制度を利用したい人は、自分に向いている融資制度の申請手続きを進めましょう。

生活費を借りたい人は生活福祉資金貸付制度を利用する

生活費を借りたい個人は、生活福祉資金貸付制度を利用しましょう。生活福祉資金貸付制度を利用すれば、生活費を借りられるからです。

生活福祉資金貸付制度とは、社会福祉協議会が提供する融資制度のことです。生活福祉資金貸付制度には、資金使途の異なる4種類の融資制度が用意されています。

【4種類の生活福祉資金貸付制度】
融資制度 資金使途
総合支援資金 生活を立て直すための費用
福祉資金 介護や療養が必要な人が使える生活費
不動産担保型生活資金 高齢者が不動産を担保にして借りられる生活費
教育支援資金 教育にかかる費用(※生活費は不可)

生活福祉資金貸付制度のなかで個人が生活費を借りられる制度は、総合支援資金や福祉資金、不動産担保型生活資金の3種類です。生活費を借りたい個人は、生活福祉資金貸付制度の3種類の制度から、自分に向いている融資制度を確認してみてください。

生活を立て直したい人には総合支援資金

生活を立て直したい人には、総合支援資金が向いています。総合支援資金を利用すれば、食費や住居費といった生活を立て直すためのお金を借りられるからです。

【総合支援資金の種類】
種類 資金使途 向いている人
生活支援費 生活を営むために必要な生活費
・食費
・日用品費
・電話代 など
生活を営むためのお金が足りない人
住宅入居費 賃貸契約を結ぶのに必要な資金
・敷金、礼金
・家賃 など
住居の入居費が足りない人
一時生活再建費 生活で一時的に必要な資金
・引っ越し費用
・滞納している税金や公共料金の支払費 など
生活で一時的に必要なお金が足りない人

総合支援資金には資金使途の異なる3種類の資金があり、それぞれ向いている人が変わります。生活を立て直したい人は、自分に向いている資金を申請しましょう。

なお、総合支援資金は、失業などによって>無職や休職中となっている人も貸付対象となる制度です。

介護や療養のお金を借りたい人には福祉資金

介護や療養で必要なお金を借りたい人には、福祉資金が向いています。福祉資金を利用すれば、介護や療養といった福祉に関わるお金を借りられるからです。

【福祉資金の種類】
種類 資金使途 向いている人
福祉費 介護や福祉で必要な資金
・介護サービスを受けるのに必要な費用
・福祉用具の購入費
・リフォーム費用 など
介護や福祉のためのお金が足りない人
緊急小口資金 緊急で一時的に必要な資金
・事故による入院費
・離職や盗難などの突然の収入減により、必要な生活費 など
緊急の事態により一時的にお金が必要な人

福祉資金には福祉費と緊急小口資金の2種類の資金があり、それぞれ向いている人が異なります。介護や療養で必要なお金を借りたい人は、自分に向いている資金を申請しましょう。

福祉資金の種類の金利や借りられる金額は、社会福祉協議会の公式サイト「生活福祉資金一覧」を参考にしてください。

融資を急いでいる人は緊急小口資金

融資を急いでいる人は、緊急小口資金を申請しましょう。緊急小口資金であれば、福祉費よりも融資限度額が低く設定されている一方で、申請から融資までの期間が短いからです。

【資金ごとの申請から融資までの最短期間と融資限度額】
資金 期間 融資限度額
緊急小口資金 5日 10万円
福祉費 約3週間 580万円

福祉費では、融資限度額が580万円と設定されていますが、借り入れまでに約3週間かかります。一方、緊急小口資金では、融資限度額が10万円と低く設定されていますが、最短5日でお金を借りられます。

そのため、10万円以内の金額をなるべく早く借りたい人であれば、緊急小口資金を申請するべきだと言えるのです。

融資を急いでいる人は、緊急小口資金から5日で借り入れる方法を、「緊急小口資金を利用して最短5日でお金を借りる方法」の記事から確認して、申請手続きを進めましょう。

持ち家のある人には不動産担保型生活資金

持ち家のある65歳以上の人には、不動産担保型生活資金が向いています。不動産担保型生活資金は、持ち家のある65歳以上の高齢者の人に生活費を貸し付ける融資制度だからです。

他の生活福祉資金貸付制度では、原則65歳未満の人を融資対象者としているため、65歳以上の人は総合支援資金や福祉資金といった融資制度を利用できません。

しかし、不動産担保型生活資金であれば、持ち家を担保にすることで65歳以上の人でも生活費を借りられる可能性があるのです。

【不動産担保型生活資金の種類】
種類 資金使途 利用できる人
不動産担保型生活資金 生活を送るために必要な資金 低所得の高齢者
要保護世帯向け不動産担保型生活資金 生活を送るために必要な資金 保護が必要な高齢者

不動産担保型生活資金には2種類の資金があり、それぞれ利用できる人が異なります。持ち家のある65歳以上の人は、自分に向いている資金を申請しましょう。

不動産担保型生活資金の種類の金利や借りられる金額は、社会福祉協議会の公式サイト「生活福祉資金一覧」を参考にしてください。

生活費が足りない人には生活福祉資金貸付制度

生活福祉資金貸付制度は、生活に必要なお金が足りない人に経済的な支援をする融資制度です。そのため、提供元の社会福祉協議会から、「生活に必要なお金が足りない人である」とみなされなければ、生活福祉資金貸付制度を利用できません。

【生活費が足りないとみなされる条件】
条件 具体例
低所得世帯 世帯全員の収入が少ないうえに、他の融資制度を利用できない世帯
障害者世帯 身体障害者手帳や療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた人がいる世帯
高齢者世帯 65歳以上の高齢者の属する世帯

低所得世帯や障害者世帯、高齢者世帯のいずれかに該当している人であれば、生活福祉資金貸付制度を利用できます。生活福祉資金貸付制度を利用したい人は、条件を満たしているかを確認したうえで、検討している制度の申請手続きを進めましょう。

なお、住んでいる地域の社会福祉協議会に相談すれば、自分が生活福祉資金貸付制度の条件を満たしているかを確認できます。生活福祉資金貸付制度の条件を満たしているかがわからない人は、住んでいる地域の社会福祉協議会に相談してみてください。

住んでいる地域の社会福祉協議会を探す際は、公式サイト「都道府県・指定都市社会福祉協議会のホームページ(リンク集)」を参考にしてください。

他の条件を満たせない人は生活困窮者自立支援制度

生活福祉資金貸付制度の条件を満たせない人は、生活困窮者自立支援制度を利用しましょう。生活福祉資金貸付制度の条件を満たせない人でも、自立した生活を送るための支援を国から受けられる可能性があるからです。

生活困窮者自立支援制度とは、厚生労働省が提供する支援制度のことです。生活困窮者自立支援制度を利用することで、自分にあった支援プランを担当者から提案してもらえます。

【生活困窮者自立支援制度の支援プランの例】
支援プラン 具体例 利用できる人
家賃相当額を支給するプラン 家賃を支払えない人に家賃相当額を支給することで、自立した生活を送るためのプラン ・離職により家賃が払えない人
・怪我や病気により働けない人
・社会に出るのが怖いために働けない人
住まいが必要な人に衣食住を提供するプラン 不安定な住居形態にある人に、緊急的に一定期間、宿泊場所や衣食を提供するプラン ・ネットカフェで生活している人
・住居を持たずに路頭に迷っている人
社会や就労への第一歩を支援するプラン すぐに職に就けない人の社会復帰を支援するプラン ・社会に出ることに不安がある人
・「他人とうまくコミュニケーションできない」と不安がある人
家計の立て直しの助言や支援をするプラン 家計を管理できるようにするために、家計を立て直すための相談や貸付制度のあっせんをするプラン ・自分で家計を管理できずに家計が傾いている人
・生活費が足りない人

参照元:厚生労働省 公式サイト「生活困窮者自立支援制度」

「家賃を払えない」「働きたくても働けない」といった事情がある人は、生活困窮者自立支援制度を利用することで、生活を立て直すための経済的な支援を受けられるうえに、社会復帰のプランを立ててもらえます。

生活福祉資金貸付制度の条件を満たせない人は、厚生労働省の公式サイト「生活困窮者自立支援制度」を参考にして、支援制度の利用を検討してみてください。

事業資金を借りたい個人事業主は日本政策金融公庫を利用する

事業資金を借りたい個人事業主の人は、日本政策金融公庫の融資制度を利用しましょう。日本政策金融公庫を利用すれば、開業資金や運転資金といった資金を借りられるからです。

日本政策金融公庫とは、日本政府によって設立された公的の金融機関のことです。日本政策金融公庫は、資金使途の異なる個人事業主向けの融資制度を用意しています。

【個人事業主向けの日本政策金融公庫の融資制度】
融資制度 資金使途 向いている人
新企業育成貸付 事業を始めるための費用 ・開業資金を借りたい人
・新たな事業を始める人
セーフティネット貸付 事業を存続するための費用 ・資金繰りが困難な人
・経営が傾いている人
企業活力強化貸付 企業を強化するための費用 ・事業を拡大したい人
一般貸付 事業に関する費用 ・資金使途を一つに絞り切れない人

日本政策金融公庫の融資制度によって、向いている人が異なります。事業資金を借りたい個人事業主の人は、自分に向いている日本政策金融公庫の融資制度の申請手続きを進めましょう。

開業資金を借りたい人には新企業育成貸付

開業資金を借りたい人には、新企業育成貸付が向いています。新企業育成貸付は、これから事業を始める人のために必要なお金を貸し付ける融資制度だからです。

【新企業育成貸付の種類】
種類 資金使途 利用できる人
新規開業資金 ・事業を始めるために必要な資金
・事業開始後に必要になる資金
・新たに事業を始める人
・事業開始から約7年以内の人
女性、若者/シニア起業家支援資金 ・事業を始めるために必要な資金
・事業開始後に必要になる資金
新たに事業を始める予定があるとともに、下記のいずれかに該当する人
・女性の人
・35歳未満の人
・55歳以上の人
再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資) ・事業を始めるために必要な資金
・事業開始後に必要になる資金
・廃業歴があり、再度新たに事業を始める人
新事業活動促進資金 ・経営の多角化に必要な資金
・事業の拡大のために必要な資金
・すでに事業を営んでおり、経営の多角化や事業の拡大などを図る人
中小企業経営力強化資金 経営を強化するために必要な資金 ・すでに事業を営んでおり、経営の強化を図る人

新企業育成貸付を利用すれば、事業の拡大を図りたい人や再度事業を始めたい人などが開業に必要なお金を借りられます。開業資金を借りたい個人事業主は、自分に向いている新企業育成貸付の種類を確認したうえで、申請手続きを進めましょう。

資金繰りが困難な人にはセーフティネット貸付

資金繰りや経営が困難な個人事業主には、セーフティネット貸付が向いています。セーフティネット貸付は、事業を存続させるために必要な事業資金を借りられる融資制度だからです。

【セーフティネット貸付の種類】
種類 資金使途 利用できる人
経営環境変化対応資金 社会や経済の変化によって、一時的に悪化した業況を立て直すための資金 外的要因により、一時的に業績が悪化している人
金融環境変化対応資金 取引先の金融機関の変化により、一時的に悪化した業況を立て直すための資金 取引先の金融機関の変化により、一時的に資金繰りに困難な人
取引企業倒産対応資金 取引企業や関連企業が倒産したことで、悪化した業況を立て直すための資金 取引企業や関連企業の倒産により、一時的に経営が困難な人

外的要因や取引先の金融機関の変化などにより、経営が一時的に困難な個人事業主であれば、セーフティネット貸付を利用することで事業資金を借りられる可能性があります。

資金繰りや経営が困難な個人事業主は、自分に向いているセーフティネット貸付の種類の申請手続きを進めましょう。

事業を拡大したい人には企業活力強化貸付

事業を拡大したい個人事業主には、企業活力強化貸付が向いています。企業活力強化貸付は、事業の強化や拡大など、企業を強化するために必要な事業資金を借りられる融資制度だからです。

【企業活力強化貸付の種類】
種類 資金使途 利用できる人
企業活力強化資金 店舗の改築や設備投資にかかる資金 事業の拡大を図り、下記のような業種の事業を営む人
・卸売業
・小売業
・飲食サービス業
・サービス業
・不動産賃貸業
IT活用促進資金 IT関連の設備投資にかかる資金 ・IT関連の設備投資により、業務の改善や高度化を図る人
海外展開・事業再編資金 事業の海外展開にかかる資金 ・事業の海外展開を図る人
地域活性化・雇用促進資金 地域経済の活性化や雇用の促進にかかる資金 ・地域経済の活性化や雇用の促進を図る人
ソーシャルビジネス支援資金 社会的な課題の解決が目的の事業に必要な資金 社会的な課題を解決するための事業を営む人
・NPO法人
・保育サービス事業主
・介護サービス事業主
事業承継・集約・活性化支援資金 事業を承継するために必要な資金 ・事業を承継する人
観光産業等生産性向上資金 観光業を促進するために必要な資金 ・観光業を営む人
働き方改革推進支援資金 非正規雇用の待遇や従業員の長時間労働の改善にかかる資金 ・従業員の働き方を改善したい人

企業活力強化貸付を利用すれば、設備投資や海外展開といった事業の成長のために必要な資金を借りられます。事業を拡大したい個人事業主は、自分に向いている企業活力強化貸付の種類の申請手続きを進めましょう。

資金使途が絞り切れない個人事業主には一般貸付

資金使途が絞り切れない個人事業主には、一般貸付が向いています。一般貸付を利用すれば、事業に関連するお金を借りられるからです。

【日本政策金融公庫の公式サイトに記載されている一般貸付の概要】

日本政策金融公庫の一般貸付の概要

引用元:日本政策金融公庫 公式サイト「融資制度一覧から探す」

日本政策金融公庫の公式サイトにも記載されているように、事業を営んでいる人であれば、一般貸付を利用できます。そのため、資金使途が絞り切れない場合でも、事業に関わるお金を借りたい個人事業主であれば借り入れできる可能性があると言えるのです。

資金使途が絞り切れない個人事業主の人は、一般貸付の申請手続きを進めてみてください。

公的融資制度によって申請先が変わる

公的融資制度によって提供元が異なるため、申請先も変わります。公的融資制度を利用したい人は、検討している融資制度の申請先を確認してみてください。

【公的融資制度ごとの申請先】
公的融資制度 申請先
生活福祉資金貸付制度 住んでいる地域の社会福祉協議会
日本政策金融公庫の融資制度 住んでいる地域の日本政策金融公庫

生活福祉資金貸付制度を利用したい場合は、住んでいる地域の社会福祉協議会に申請する必要があります。一方、日本政策金融公庫の融資制度を利用したい場合は、日本政策金融公庫が申請先となります。

公的融資制度を利用したい人は、検討している融資制度の申請先で申請手続きを進めましょう。

なお、住んでいる地域の窓口を探す際は、社会福祉協議会は「都道府県・指定都市社会福祉協議会のホームページ(リンク集)」から、日本政策金融公庫は「店舗案内」を参考に探してみてください。

どちらの公的融資制度でも必要書類の提出が求められる

どちらの公的融資制度を利用するにも、申請後に必要書類の提出が必要です。必要書類を提出しなければ、公的機関での審査に通過できないため、公的融資制度を利用できません。

公的融資制度を利用したい人は、検討している融資制度で提出を求められる必要書類を確認しておきましょう。

【公的融資制度ごとの必要書類】
公的融資制度 必要書類 具体例
生活福祉資金貸付制度 ・本人確認書類 いずれか2点を提出する
・運転免許証
・パスポート
・マイナンバーカード
・住民基本台帳カード
・各種健康保険証
・住民票の写し
・収入証明書類 世帯全体の収入を証明できる書類を1点提出する
・源泉徴収票
・直近3か月分の給料明細書
・確定申告書
・給料証明書
・借入申込書 住んでいる地域の社会福祉協議会の公式サイトでダウンロードできる書類
日本政策金融公庫 ・借入申込書
・創業計画書
・企業概要書
日本政策金融公庫の公式サイトでダウンロードできる書類
・申告決算書 申告した場合のみ、直近2期分の決算書を提出する

生活福祉資金貸付制度を利用する場合、本人確認書類や収入証明書類といった必要書類の提出が必要です。一方、日本政策金融公庫の融資制度の場合は、借入申込書や申告決算書といった必要書類の提出が求められます。

公的融資制度を利用したい人は、提出を求められる必要書類を申請後に用意しておきましょう。

なお、申込者の状況によっては、追加で必要書類の提出を求められる場合があります。そのため、公的融資制度を利用したい人には、提出が必要になる書類を申請時に担当者へ聞いておくことをおすすめします。

FP監修者コメント

ファイナンシャルプランナー内山氏
社会福祉協議会や日本政策金融公庫は相談だけでも丁寧に応じてくれますので、まずは自分自身の状況を整理し、一度相談に出向いてみるのも1つです。実際にお金を借りなくても、様々な事例に接している担当者から思わぬヒントをもらえるということも期待できますよ。[fp_uchiyama]

弁護士監修者プロフィール

bengoshi_saito
<氏名>
齋藤 健博(銀座さいとう法律事務所)
<プロフィール>
弁護士ドットコム1位の実績。慶應義塾大学出身。
テレビ出演多数。今日も多数の相談に応じている。
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