新社会人は意識を上げすぎない方がいい。副業より残業の方がぶっちゃけ儲かるよ


こんにちは、新卒で就職したら一切仕事が出来ず破滅したので、しょうがないからお金を掻き集めて起業したら更に巨大な破滅が発生した借金玉です。
今年も年度始めの時期がやって来ましたね。僕くらい熟練の社会人になりますと「ああ、この時期は憂鬱だし面倒事が発生しがちで最悪だ」くらいの感慨しかないのですが、新生活に向かって希望に燃えている新卒の皆さんもいらっしゃることだと思います。ところで、社会人って言葉「社会」と「人」という巨大な概念が並んでいて怖くないですか。社会についても人についても何一つわからないのに、社会人になってしまうわけですよ。恐ろしい。

それで最近は働き方改革だとかなんとかで、副業とか起業とかそういう方向性に光が当たっております。僕個人も一端のサラリーマン無理太郎、立派な社会人無理太郎ですので働き方が多様化することは良いことだな、と思います。最近新卒で就職される方は、「一生一つの会社で安定」というキャリアプランをそもそも想定しない方も多く、世の中は10年足らずで結構変わっていくなと感じます。僕が新卒で就職した頃は、まだキャリアプランの中に「副業」や「起業」が存在する人は稀でした。

そういうわけで、「就職したら副業をしよう、そこから上手く行ったら起業しよう」とお考えの皆さんも結構多いのではないかと思います。残業なんてナンセンスだ、業後の時間は自分のために使いたい。この考え方は非常に正しいと思いますし、サービス残業なんてものがもっての外なのはその通りです。しかし、残業全否定には「ちょっと待って、自分で事業をやるならそこはちょっと冷静になった方がいい」というところがあります。

さぁ、考えていきましょう。

残業はぶっちゃけ儲かる

さて、「残業代が出ない」というケースは別とします。この場合は労働者にとっての生産性がゼロですので、これはもう話にならない。しかし、残業代がちゃんと出る場合を考えてみてください。一日8時間の法定労働時間を越えて労働した場合の残業には、25%の割り増しがつきます。簡易化して考えると、月に22日働く方の給料が22万だった場合、一日8時間で時給1250円(簡略化のため昼休みなどは省略しました)。残業の場合ここに25%の割り増しが乗って1562円になります。

この差、1250円なら「都心のアルバイトなら結構給料が高い部類」ですが、1562円になると「なかなかこの金額のアルバイトはない」になります。25%の差はそれだけ大きい。副業も起業も利益のためにやるものですから、この生産性を下回るならやる意味がないのです。

 労働者にとっての生産性とは何か。「いかに楽してカネを貰うか」です。よく経営者は「生産性を上げろ」と言いますが、あれは労働者にとっては「生産性を下げろ」と同義です。働かずに金を貰うのが労働者の理想形であることは今更議論の余地がないでしょう。しかし、経営者というのは流石に熟練の悪さを持っているので、この「経営者にとっての生産性」と「労働者にとっての生産性」を巧みにすり替えて来ます。

会社にとっての生産性の高さというのは「安いカネでいっぱい働く」です。これは、労働者にとっての生産性と完全に対立する概念だということをまず考えてみてください。そして、あなたはなんのために働くか。副業や起業をお考えの皆様なら、「会社に尽くすため」という答えはあり得ないでしょう。そう、あなたはあなたの幸福のために働くのです。しかし、意識が高まり過ぎるとこの前提が実に容易く崩壊します。

非契約社員という笑えない概念

昔、知人が某高級なシャンプーとかそういうものを売るネットワークでハイパーなビジネスにずっぽりいったことがあります。彼が売りつけようとしてくる2万円のシャンプーと、彼の先輩だと名乗る人物のハイパーディメンションオブクリティカルアラウンドカオス統括係長みたいな肩書の名刺に苦笑したのを今でも良く覚えています。

皆さんもおそらく見覚えがあると思いますが、あの手のビジネスに引っかかる人は大抵意識が天空まで舞い上がるほど高まっています。当時僕は起業したてで、出資者と「あれは最高のビジネスモデルだ、なにせ販売部隊が非契約社員なんだから」と悲しい冗談を飛ばしあったものです。僕らはある程度説得を頑張りましたが、結局彼は悲しい結果になりました。

ネットワークビジネスが儲からないとは言いません。適切なタイミングで、具体的に言えばネットワークの初期にガッツリ食い込めば儲かることもあると思います。だから、世にネットワークビジネスの勧誘は絶えないわけです。しかし、「儲け話の勧誘」なんてものは基本的にありません。我々起業家は「儲け話はないか!」と常に目を血走らせ、こまねずみのように市場を走り回っている生き物です、そんなところに「儲け話の勧誘」なんてあるわけがない。冷静にビジネスモデルを分析し、電卓をたたいてみれば「これは儲からない」と彼も気づけたはずです。

しかし、何故か人は「非契約社員」になってしまう。意識をどこまでも高め、「先輩はカリブ海のクルージング帰りなんだぜ」「俺もいつかヨットを買うんだ」「自由に生きるのさ」などの、聞いた側としては苦笑する他ない台詞を吐いてしまう。これはひとえに「意識が高まり過ぎた」のが原因と僕は思っています。

新社会人よ、意識を下げろ!

ネットワークビジネス太郎に「ところで、個人事業主の開業届出した?」と質問して、「出した」という答えが返ってきたことは今まで一度たりともありません。おまえそれ儲ける気あんのか、根本的なところからダメやんけというこれが悪い意味での「意識の高さ」を象徴すると思います。ヨットの見積もり取る前に開業届出せよ、青色申告しろよ……。

しかし、残業をせず副業をするというのはこの「非契約社員」状態に陥るリスクが極めて高くなる行動なのです。というのも、社員を雇うよりは安く仕事を外注した方がお得、というのはあらゆる事業主が理解しているこの世の理なのですから。数字できちんと自分がどれだけ稼げば得なのか把握すらせず、マーケットにノコノコ出て来る人間などカモがネギ背負って鍋のアクまで掬ってくれている状態です。

社会貢献、自由な未来、カリブ海に浮かぶヨット、どれも素敵です。僕だってそりゃ社会貢献したいし、カリブ海にヨット浮かべてピニャコラーダ呑みたいよ。なんか僕のイメージだと、小回りの利くゴムボートに乗った海賊がロケットランチャー撃って来るんですけど、僕だってそういう未来は欲しいです。でも、そういう未来に至るための道って意識を天空に舞い上げることではなく、手元の10円100円の利益を積み上げていくことなのですよ……。つまり、「この副業儲からないな、残業しよ」という選択は起業家として、事業主として100%正しいのです。

副業ブームに僕も一人の経営者としての意見を言うと「それはいいな!」と思います。社員なんざ雇いたくねえ、というのは大方の事業主の本音だからです。外注先がいっぱい増えると単価も当然下がるし、どんどん副業流行って欲しいなと思います。もちろん起業ブームも大歓迎です。市場における肉の総量は市場におけるカモの総量とイコールだからです。僕も一度は鉄の棒をブッ刺され、炎の上でこんがり焼かれた身の上。「次は俺がローストしてやる!」という気持ちが無いと言ったら嘘になる。

その立場から言わせていただくと、「意識の高い起業・副業志望者」というのは大変ありがたい存在と言えます。なんとしても首にナワつけて魚を獲らせて、獲った魚の1割くらい与えて飼育したい…。よし、ここはひとつ投資だ。カリブ海まで行ってヨットに乗ってる動画でも撮影してくるかという気持ちが発生してきます。皆さんの意識を高めることにより、宇宙からあの力が発生し、僕が豊かになる。そういうビジネスも…ナシではない。やらないけど。怒られるから。インターネットはすぐ怒るから。

低い意識が正解を掴む

さて、そんなわけでタイトルだけ読んで怒る人も絶対に発生するだろうこの記事ですが、僕は起業・副業、いずれも大変結構だと考えています。僕自身がやったんだから否定できるわけもない。自分が失敗したからおまえも失敗する、というには僕はちょっと無能過ぎるので、皆さんが成功する確率は十分にあると思います。少なくとも僕以上には。

しかし、あなたの能力や適性とは無関係に、「意識が高まり」過ぎるとそれは失敗するのです。残業代より安い単価で副業やってる人……正直いっぱいいます。ネット見てると結構観測できるので。「いい時代になってきたな!」と「悲しいな」という気持ちが合半ばする昨今です。事業主に最低賃金は無いですからね。

事業主の判断というのは、実を言えばとても泥臭いものです。要するにそれは「どっちが儲かるか」という無限に続く問題集なのです。選択肢は有限、制限時間は酷薄、挙句の果てに選択を間違うと鉄球とか降って来ます。ここに、フンワリした夢や希望の入る余地はありません。そりゃわかるさ、僕だってフワッフワの夢と希望を抱えて起業したんだ。「お菓子の城を建てます!たっぷり生クリームトッピングします!」みたいな事業計画書いたよ!フワッフワした夢がいかに魅力的かは僕が一番詳しいよ!大失敗したよ!

そういうわけで、皆様フワフワと軽い意識で天空まで高まるのではなく、泥臭く鈍重な「まて、残業代の方が時間単価高いな……」という意識で立派な社会人になってください。立派ではない社会?人?からは以上になります。借金玉は皆さんの幸福な未来を心より応援しています。社会と人について、本当に何もわかりません。

著者 : 借金玉

週刊プレイボーイでコラム『今日はこれに頼りました』を連載中。仕事や日常生活で役立つライフハックをTwitterやブログなどで配信。

Twitter : @syakkin_dama

Blog : 発達障害就労日誌