甲賀忍法帖 山田風太郎

山田風太郎氏のいわゆる「忍法帖」シリーズの第一作目です。深く考えずに読めるアクションもので、ストーリーも面白く、読みやすい作品です。どうなるの?とページをめくっているうちに終わってしまう、優れたエンターテイメントだと思います。
大筋は、甲賀忍者と伊賀忍者それぞれ十人が互いに戦い、相手の人数を減らしていくというもの。長く対立し憎みあっていた両派ですが、実は頭領の孫同士の結婚が決まっていました。そのため主人公格である孫二人は、この戦いを望んでいないという設定も非常に重要です。

両派の戦いは、徳川秀忠の後に誰が将軍になるかを決めるための、竹千代派・国千代派の代理戦争であり、伊賀と甲賀がそれぞれどちら派であるかということは、序盤で明らかにされています。つまり史実を知っていれば、どちらが勝つかは明白。このように決定的なネタバレがされているのにも関わらず、面白さはまったく損なわれません。
登場する忍者の中には、その特異な能力のために「どうやったら倒せるの?」と思うようなキャラクターもいます。しかし彼らはそれぞれが個性的な技を身に着けているため、争う相手によっては非常に有利になったり、不利になったりするのです。その組み合わせも上手く、読み進めるうちに、パズルのピースがかみ合って解けていくような爽快さを覚えるかもしれません。

また、医学の知識に富んだ著者が考え出す忍法が面白いのです。「人間の体にはそもそもこういう機能があり、これを限界まで高めた結果こういうことができるようになった」などといった説明には、よくそんなことを考えたなぁ、と感心してしまうかもしれません。本当にそんなことが可能かどうか、という問題ではなく、その説明によってむしろファンタスティックな雰囲気が増しているように感じられます。

ちなみに、いつどこで読んでも面白い本書ですが、あえてこの本を読むのにおすすめなシチュエーションを挙げるとすれば、献血中に読まれるといいでしょう。あまりのワクワク感に血流がよくなり、いつもより早く献血が終わったという経験があるからです(看護師さんに褒められました)。