阪急電車 有川浩

図書館戦争で有名な有川浩の作品です。

阪急電車。近畿圏内の方しかご存知のないローカルな電車だと思います。そこで繰り広げられる日常を電車の線路、駅になぞりながら一カット切り抜いた作品になっています。
一カットと言っても様々な人々、図書館でたまたま出会った二人、DVに悩む若いカップルや、婚約者を寝取られた花嫁、主婦同士の見栄に付き合わされる主婦などが織りなす日常すぎる日常を上手く一本の電車の中で描いています。

一つ一つ物語が重なっていくのですが、一つ一つ丁寧に描かれているため、そこまでガヤガヤとした印象は無く、すんなり物語が流れていきます。
それこそ自分自身もその電車に乗り合わせたような感覚で読み進めていくことができ、三時間もあればパッと読み終われます。
主人公と言う概念はあまりなく、最初に出てきた男女二人が一応主要人物的な立ち位置になっていますが、他にも内容の濃いキャラが次々と電車に乗ってくるため、その印象は薄い気がします。また電車の線路や駅名を一つの区切りで登場するため知らない人にも解りやすいかと思います。
阪急電車は以前映画化されていましたがそちらはやはりローカルな電車のお話だったためあまり浮いた話もなく終わってしましましたが、映画の方も実際の線路を使ったため、リアリティが出ていました。

本の話に戻りますが、上記で書いた映画版で主役を務めた中谷美紀さんのキャラで婚約者を寝取られた花嫁がやはり本作で一番印象に強いかと思います。
何故かと言うと電車にウェディングドレスのような真っ白なドレスを着て手には結婚式の内土産を持っているという様な一風変わった訳アリすぎる人物だからです。
彼女は婚約寸前だった彼氏を会社の同僚に寝取られるというような悲惨な現状でした。そこで復讐で真っ白なドレスに身をまとい、裏切り者の二人の結婚式に出席すると言うような話なのですが、スッキリとまではいかなくやはり深い悲しみを味わったため、電車の中でも一際めだってしまい、しかし、そこに乗り合わせた主要人物たちが暖かくフォローし合うような温かいエピソードの一つになっており、この話は復讐が題材で、暗めですが一番好印象になっています。

また話の終わり方も、始めの駅から終点、折り返し、また始めの駅に戻ると言う流れなので、とてもリズムよく話も終わり、あとくされない作品です。