メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故 大鹿 靖明

カテゴリ:歴史・自伝 本の著者:

『メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故』は雑誌アエラの記者である大鹿靖明氏による、福島原発事故を題材にしたドキュメンタリー本です。
書籍内では、原発事故の発生からその後の沈静化、そして菅内閣の退陣までが描かれています。

新聞記者出身の筆者によるドキュメンタリー本らしく、当事者に対する綿密な取材から得られたテレビ報道では知ることの出来ない、多くの情報が含まれています。
一例を挙げると、原子炉内の圧力が高まり格納容器の温度が上昇し続けている時、当時の首相菅は格納容器のベント開放を東京電力に命じます。しかし、数時間たってもベント開放したという連絡が来ない。いてもたってもいられなくなった菅は官房長官の枝野と相談したうえで、直接現場に飛ぶことにします。

福島第一原発にヘリコプターでついた菅は、免震重要等の司令所に入り、唖然とします。あまりにも多くの人で司令所がごった返しているからです。菅は罵声を浴びせます。
よく菅が原発に行ったことで作業が遅れたと指摘されますが、この書物によるとまた違った側面が見えてきます。

菅が訪れるまで、原発の所長は電源を回復させることでスイッチを入れてベントを開放しようと作業を進めていました。しかしその説明を聞いた菅は、それではいつになってもベント開放ができないだろうと叱責した上で、人を送り込んでやれ、と命令したのです。その命令を受けて、「決死隊」を送り込んでバント開放はなされることになり、福島原発はチェルノブイリのようになることからは、免れたのでした。

また菅が原発に訪れる際、官邸付きの医官が菅に同行しているのですが、その医官がずっと「ここは危ないから早く東京に戻ろう」と言い続けていたことや、菅が原発を離れる直前、菅に付けられた線量計のアラームが鳴ったこと、そういう知るとぞっとする内容がこの書物にはたくさん含まれているのです。

さらに菅の強権、超法規的処置により東京電力に送り込まれた細野首相補佐官が、東京電力の意思決定には社長が全く力を持っておらず、勝又会長が実権を握っていること、とか非常事態であるにもかかわらず東京電力の取締役会が稟議書を回して意思決定をしようとしていたことなど、知れば知るほどあきれると共に怖くなる事柄がたくさん詰まっています。
一冊であの原発事故がどのようなものだったのかを知るためには、『メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故』はうってつけの書籍だと思います。

良い書評でしたら共有お願いします

関連書評

絵画で読む聖書 中丸明

中丸明氏が書いた絵画で読む聖書は日本人には馴染みが薄い聖書(旧約聖書・新約聖書)を世界的名画とともに

記事を読む

神聖喜劇 大西巨人

大西巨人著『神聖喜劇』は日本の純文学を代表する傑作です。保坂和志や奥泉光、阿部和重といった作家から柄

記事を読む

父の詫び状 向田邦子

皆さんは向田邦子の『父の詫び状』という本をご存じでしょうか。 向田邦子というと、『阿修羅のごとく』

記事を読む

天命つきるその日まで アンパンマン生みの親の老い案内 やなせたかし

アンパンマンの作者でお馴染みのやなせたかしさんのエッセイで、93歳のときに執筆された本です。 主に

記事を読む

密告者ステラ ~ヒトラーにユダヤ人同胞を売った女 ピーター・ワイデン

ピーター・ワイデン著者「密告者ステラ ~ヒトラーにユダヤ人同胞を売った女」はヒトラー支配下のドイツに

記事を読む

月間人気書評ランキング

既知からの自由 ジッドゥ・クリシュナムルティ

簡単に言えばこの本には真理が書かれています。それは痛快なまでに真実なの

学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話 坪田信貴

この本は学年でビリで偏差値が30以下のギャルが進学が危うい状態だったの

甲賀忍法帖 山田風太郎

山田風太郎氏のいわゆる「忍法帖」シリーズの第一作目です。深く考えずに読

孤島の鬼 江戸川乱歩

江戸川乱歩は非常に著名な作家で、名前を聞いたこともない、という方は少な

阪急電車 有川浩

図書館戦争で有名な有川浩の作品です。 阪急電車。近畿圏内の方しか

→もっと見る

PAGE TOP ↑