あぐり95年の奇跡 吉行あぐり

カテゴリ:小説・文芸 本の著者:

日本で「あぐりさん」と訊けば、「1997年の、NHK朝の連続テレビ小説のあぐりさん」と誰しもが連想する程、吉行あぐりの
名前は全国で知らない人がいない位の有名人です。97年以降に出生した、今時の若者はご存じない方が大半を占めるでしょう。
彼女を知る事と、知らない事とでは、人生の深みにすら関わる問題だと、私自身はあぐりさんを尊敬しています。

この本の内容は、あぐりの章、和子の章、あぐりの日記の3部から構成されており、娘で女優の吉行和子さんのエッセイが読めるのも
面白く、前半のあぐりの章とはうって変った新仮名遣の文章は、彼女の少女時代からの一つ一つの出来事を、分かり易く書かれてあり、
興味を持って読むことが出来ました。
旧仮名遣の文体は慣れるまで読み進めるのに時間を要しましたが、あぐりさんの品性溢れる
言葉遣いや、日々の岡山での出来事が情景豊かに書かれてあり、あぐりさんも中々の書き手だとすっかり感心させられました。

あぐりさんの夫吉行エイスケ氏は作家。息子の吉行淳之介氏も作家。和子さんの妹で、あぐりさんの次女である吉行理恵さんも「作家」
と、驚くばかりの文学的才能をこの一家は持っておられるのです。そして、淳之介さんと理恵さんは、前代未聞の、兄妹で芥川賞を受賞
した天才なのです。この本から見て取れる文章の感じでは、和子さんとあぐりさんが非常によく似ています。読者が読んでいても、
分かり易いのです。淳之介さんと理恵さんが、読者にとっては難解である文章なのとは対称的と言えるのです。

91歳から海外旅行に目覚めたあぐりさん。本当の話なのかとすら疑う程の、「元気」な方です。旅行会社の人ですら、「91歳
ですよ、行先はメキシコって本当ですか?」と吃驚でした。メキシコまでの距離もあぐりさんにとっては気にもならないそうで、
こんな高齢者がこれから増えていけば良いと思いました。何歳になっても、「若さ」を失わないあぐりさんに励まされる読者は
沢山いると思います。この本は、私に元気を与えてくれました。

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