両親を探してさまよい歩く子供の幽霊

数年前に勤め先の近くで火事が起こりました。
その火事はある家に住んでいた子供が留守番の最中にライターで遊んでいて、誤ってカーテンに燃え移りそのまま子供だけが亡くなったようでした。
家族はすぐに別の土地へ引っ越して行ったらしく、家も取り壊されてただの空き地になっていました。
しかし、それからその火事現場近くではある噂を聞く様になりました。
それは「夜にあの辺りを歩いていると真っ黒焦げの子供が付いてくる」というものです。

私は霊感はなく今まで幽霊も全く見た事がないので気にしていませんでしたが、同僚のA子は所謂見える人らしく、たまに会社帰りに見かけると言っていました。
A子はそういった体質だからかついてこられやすいからと、いつも清めの塩を持ち歩いていたのです。
しかし、その子どもの幽霊はA子を気に入ってしまったのか、それとも自分の両親と同じ年齢の大人が多い場所だからか、とうとう会社の前に現れるようになってしまいました。

最初に会社の前にあの幽霊がいると気づいたのは、警備員の方です。
夜に見回りをしていると玄関の所に子供の背丈の影が見えたんだそうです。
誰か社員の子供か、それとも近所の子かと思いつつ「もう誰もいないから帰りなさいよ」と近づいた瞬間、その子供が警備員さんの手を掴み「家がなくなっちゃったの、お母さんもお父さんもどこかに行っちゃったの」と言ったのだそうです。
その子供は全身が真っ黒になっており、肉の焦げた臭いまでしたそうで絶対にあの火事の子だ!と思った瞬間、子供は消えていたらしいのです。
他にも見たという社員が多かったので近い内に念の為除霊しようという事になりました。

けれど除霊師さんが来る前の日に、とうとう私も見てしまいました。
その日は忙しく、仕事が終わったのは夜11時過ぎの事でした。
丁度A子も残っていて途中まで一緒に帰ろうと、会社から出ようとしたのです。
すると玄関の所に黒く小さな影が蠢いているのが見えました。
何だろうと思い一瞬足を止めましたが気のせいかと再び歩こうとした瞬間、A子が「そっちに行っちゃダメ!」と私を引き留めました。
どうしたのかとA子を見ると青ざめていて、震える指で玄関の方を指さしながら「あれ…あの子…あの子供の幽霊が…」と言うのです。
もう一度そちらを見ると、そこにはスライムのようなウネウネした1m位の物体があり、そこから何本もの腕や足が生えていました。
そして今思い出しても恐ろしい地獄の底から聞こえてくるような声で「お母さん…お母さんだ…お母さん何で置いていったの…」とブツブツつぶやいていました。

見た事もない恐ろしい光景に固まっているとその物体は「お母さんお母さんお母さんお父さんもどこかに隠れてるのお母さんお母さん」と喚きながらこちらにずるずると這いずってくるのです。
早く逃げなきゃと思っても、金縛りにあったかのように体も動かせずにいた私の横をA子がすり抜け、白い粉のような物をその物体に投げつけました。
するとその物体はうぎゃあああああと呻き声を上げてその場に止まりました。
その間にA子が私の腕を引っ張って会社の裏口から連れ出してくれて、何とか逃げ出す事が出来たのです。

翌朝早くに上司に連絡をして説明し、除霊師さんと責任者以外は除霊が終るまで立ち入らないようにとの事になりました。
後から聞いた所、A子と私が見たあの物体はあの土地の浮遊霊等を飲み込んだ物で、火事にあった子供の幽霊もあれに取り込まれ、自分の両親を探していたそうです。
もう除霊をしたので現れないだろうと言われましたが、未だにあの物体は夢に出てくる程です。

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