バベットの晩餐会 イサクディーネセン

カテゴリ:小説・文芸 本の著者:

小説、バベットの晩餐会を読んでみました。この本は、19世紀後半の外国の小さな素朴な町が舞台です。敬虔なクリスチャンの中年姉妹と、訳ありの女性バベットが中心となって物語が綴られていきます。これだけだと「え…それはずいぶんと地味そうなハナシだね。たいくつそう。」といった感想を持つかなと思います。

実はこの小説、映画化されていて20年くらい前にテレビで放送されていたのを見た事があったのです。そのときはちゃんと見なかったのですが、よく分らないながらも、何か印象に残っていました。

先日、新聞に本の紹介がされていて、その時に読んでみようと思い立ったのです。結論から言うとたいへん素晴らしい物語でした。いい本は心の栄養になる、とよく言われますが、まさにそのとおりだなと。今とは違う古い時代の価値観を、完全に理解することはできないけれど、日々正直に暮らすことの意味、芸術の意味、宗教の意味など、人が生きることの意味を考えさせられました。宗教については日本人には理解しがたい観念があると思います。

宗教の教義を守るためにギクシャクする人間関係、生活の不便、でも一体感を持てる幸福感、などをこの小説は教えてくれます。あまり若い人が読んでもピンとこないかもしれません。

社会に出て、仕事で苦労をして、世間は自分に優しい人たちばかりではないと実感した人が読むと、腑に落ちると思います。ストーリーとしては富くじで大金を手にしたバベットが本格的なフランス料理を、お世話になった中年姉妹とその親しい人にふるまうのがメインですが、共感したのはそういった部分だけではない。狭いコミューンで暮らす人々の確執や精神のありようが、「そうだよね。生きるってこういうことだよね。」と再確認させてくれます。

それはマイナスな面だけではなく、前向きな意味でも。こういった面白い小説を書く人が50数年前にいたんだなあと思うと嬉しくなります。この人の作品をもっと読んでみたくなりました。

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