一夢庵風流記 隆慶一郎

カテゴリ:歴史・自伝 本の著者:

この本の主人公前田慶次利益については、マンガやゲーム、パチンコ、パチスロが好きな人達はよく知っていると思われます。なにしろこの戦国武将が一躍有名になったのは、この小説を原作にした少年ジャンプに連載された「花の慶次」。北斗の拳でお馴染みの原哲夫氏の作品です。その後パチンコ、パチスロになって1大ヒット。今やヘタしたら信長、家康よりも人気があります。

前田慶次は一言で言うと「男が惚れる男」と言う奴。誰よりも戦に強く、友情を尊び、それでいて教養のある天下一品の傾き人。豪放磊落さと繊細さがうまく入り混じった魅力的なキャラになっています。男なら一度は妄想する理想像を具現化したような人物ですね。この小説では、とにかく前田慶次がかっこよく活躍します。脇役もそれなりに面白いですが、慶次郎の魅力抜きにはこの話は成立しません。

逆に言うと少しでも嘘くささや陳腐さが感じられるようでは一気に駄作になってしまいます。そうならないのは、ひとえに作者の隆慶一郎氏の見事な文体にあると思います。フランス文学の素養に裏打ちされた、知性と趣きのある文章が作品全体を引き締めているのが見事。極めて洗練されており、最後まで安心して読むことが出来ます。
この小説、一貫して友情について描かれています。男同士の熱い友情、戦、ときたら、少年ジャンプに連載されたのもうなづけるところ。努力だけは無縁ですが、それはこの前田慶次の魅力が、そのチートな能力にかかっているので止むを得ません。

個人的には、本編の導入部に登場するディレクターのエピソード、これがものすごく良かった。異能ゆえに理解されない現代の傾奇者、ここだけを膨らませても一遍の小説として面白いものが出来そうな気がします。

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