スプートニクの恋人 村上春樹

カテゴリ:小説・文芸 本の著者:

まず、この「スプートニクの恋人」という物語は、語り手の「ぼく」と、「ぼく」が思いを寄せる小説家志望のすみれという女性、そしてすみれが思いを寄せるミュウという中年女性といった三人の人物が主体となって構成されています。

そして、この物語は「ぼく」という男性によって語られていきます。「ぼく」はすみれに対して強い恋心を抱いています。しかし当のすみれは生まれて22年間、一度も恋をした経験がありませんでした。そんな彼女でしたが、ある出来事がきっかけでミュウという女性に「激しく」恋に落ちます。結果的にその恋は叶うことがなく、すみれはミュウとの旅先であるギリシャの島で消えてしまいます。

他の村上作品に出てくる男性によくあるように、「スプートニクの恋人」の「ぼく」という男性もまたドライな人物です。基本的に他人に執着したり、依存したりすることはありません。そして深い孤独を背負っています。にもかかわらず、すみれに対しては激しい恋心を抱いています。よこれはすみれが決して美人だからだとかそういう理由ではありません。

すみれもまた孤独です。彼女は幼い時に実の母親を亡くし、継母に育てられてきました。継母から愛情を受けて育ったものの、すみれは何度も実の母親に会いに行く情景を夢で見ます。父親はいますが、彼はとてつもなくハンサムで、決して美人だとはいえないすみれはそれをコンプレックスに感じていました。

そんな背景があるからこそ「ぼく」とすみれが恋をしたのは、彼らが生まれ持った過程で抱えることとなった激しい「孤独」を埋めるためだったのではないかと思うのです。すみれが男性ではなく女性に恋をしたのも、父親的な男性ではなく母親的な存在を求めていたからだと思います。でも彼らの恋は叶いません。その事にどのような意味があるのか、またミュウという女性の存在意義は・・・などなど、読むたびにじっくり考察したいと思える点が出てくることがこの小説の魅力のひとつだと私は思うのです。

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