ハニービターハニー 加藤千恵

カテゴリ:小説・文芸 本の著者:

「ほんとの恋よりドキドキするかも」まさにその帯の言葉通りの作品でした。

ごくごく普通のラブストーリーかと思っていましたが、友人の彼との浮気や学生時代の友人との恋、一夜の過ち、どれも甘いというよりは苦く切ないラブストーリーばかりでした。読んでいるうちにストーリーの中へと引き込まれていきます。ハッピーエンドで終わらない、切ない話だからこそ現実味を帯びているようにも感じました。

話の構成も私好みのもので主人公の心情をはっきりと描写するのではなく主人公のの行動を通して心情を書き表す描写が多く感じます。何気ないひとつひとつの行動に主人公の意識が入り込んでいます。主人公がティーカップを手に取るその行動ひとつにも主人公の切なさが滲み出ている文章です。

短編集なのでだらだらと話が続くこともなく、活字が苦手な人にもとても読みやすい作品だと思います。恋愛漫画とはまた違った味があるので小説を読む習慣のない10代女子にもぜひ読んでもらいたいです。

物語の終わりは登場人物たちがどうなったかは書かれておらず、主人公が自分の感情や想いと現実でのうまくいかない恋愛に葛藤する様子を想像することのできる描写で終わっています。「このあとどうなるの?」そんなハラハラドキドキが満載の作品です。掲載されているのはすべて短編の作品ですが、はじまりから終わりまで長編で読みたくなるものばかりです。
1話目の友人の彼との浮気の話では、ラストには友達の彼は出てきません。主人公とその友達の間だけで話が進んでいきます。当事者がいないからこその緊張感が読み手にもひしひしと伝わり、あまりの緊張に手に汗にぎります。

まるでドラマのワンシーンを見ているかのような細かな描写はいい意味でも悪い意味でもハラハラします。
現実ではまず味わうことのない、けれど実際にありそうな恋の話が短編で数作書かれています。今までの恋愛小説とは少し違う、特殊な恋の話を楽しみたい人にもこの作品はおすすめします。読むと不思議と恋がしたくなる作品集です。

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