五匹の子豚 アガサ・クリスティー

カテゴリ:小説・文芸 本の著者:

名探偵ポワロの推理物です。
自分で購入し、一気に読んでしまいました。
ありがちな推理物ではなく、人間ドラマが描かれているのが良いです。
事件の依頼者は、カーラ・ルマルションという若い女性。
子供の頃、両親を亡くし、叔父夫婦の育てられたものの、恵まれた裕福な環境に育ち、美貌にも知性にもあふれて、何も悩みが無かったものの、成人になり、婚約した時に、恐ろしい真実を知らされる。
それは、父親が毒殺され、犯人は、母親。
動機は、父親が浮気をし、離婚するとの話が持ち上がった為とされていました。
カーラは、自分の結婚に際し、その事の真実が知りたいと思い、探偵ポワロの元を訪れ、依頼します。
父親は、散々浮気を繰り返す画家。
母親は、それにじっと耐えていました。
それも、一時の遊びで別れるという事が無かったからです。
しかし、最後の時は、浮気相手が離婚して、私と結婚すると断言した為、母親が殺したとされています。
おかしな事に、裁判でも、母親は、自分が殺したと言い張り、死刑にされてしまいます。
ポワロは、色々、調べていくうちに、おかしな点を多々、見つけます。
それは、母親が自分の妹を、事件後すぐに遠ざけ、罪は償わなければならないとの旨を書いた手紙を出した事。
幸せそうに死を受け入れた事。
そして、浮気相手の女性、エルサは、再婚を繰り返すが、不幸な事。
真実は、父親のアミアスは、一時の恋に落ちたものの、やはり、さめてしまい、エルサの絵を描いたら、彼女とは別れると、妻にいい、それを偶然に聞いたエルサこそが、アミアスを毒殺したのでした。
そして、その罪をカーラの母親のカロリンにきせたのでした。
当時の関係者を集め、ポワロは、その真実を話す。
今や、貴族の夫人となったエルサに対し、ポワロは、真実を当局にはなし、カロリンの無罪を当局に話すと告げる。
物理的証拠も少ないし、今の地位にあるエルサを訴訟するのは難しいと話すポワロに対し、エルサは、自分の生死をかけて、裁判を闘うのは、はりのある生き生きとした楽しさがあると話す。
それを今の夫が嫌がる事を気にしないという彼女に対して、ポワロは、「そうでしょう。あなたは、一生のうちで、他人がどう思うかきにかけた事がない人間です。そういう心づかいがあれば、もっと幸福になれたかもしれません」と、同情する。
そして、「あなたは、まだ学ばなければならない事、大人らしい感情です―すまり、人に対する哀れみとか、同情とか、理解の感情です。あなたが知っていることは、愛と憎しみだけなのです」と、告げます。
私は、この言葉に、非常に心をうたれました。
私も、今まで、世の中には、悪と善、愛と憎しみしかないと思い込んでいたからです。
この本を読んでから、自分がこういう行動をしたら、他人がどう感じるか、傷つくだろうか?と思いながら、行動、発言するようになりました。
普通のミステリ小説では、犯人は、誰それ、トリックは、どうのという印象しかありませんが、この本は、真犯人に対しての哀れみと同情が描かれる、考えさせられるものだと思います。
そして、人の事を思いやれない人を見ると、ただ怒るだけではなく、この人も大人らしい哀れみや人の痛みを判れない可哀想な人間なのだと、同情する事もできるようになりました。
アガサ・クリスティーの小説は、単なるミステリ小説ではなく、人間ドラマが描かれて、色々考えさせられるものなので、大好きです。

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